AIコーディングエージェントや社内LLM活用が進むと、「プロンプトを書く人」だけでは足りなくなってくる。最近よく聞くのが、プロンプトエンジニア・コンテキストエンジニア・ハーネスエンジニア・ループエンジニアという分け方。
名前は新しいけど、やっていることはシステム開発の延長線上にある。この記事では、それぞれのざっくりした概要と、現場で何をやる役なのかを整理する。
先に結論(4役の違い)
- プロンプトエンジニア:モデルへの「言い方・指示」を設計する
- コンテキストエンジニア:モデルに渡す「材料」を設計する
- ハーネスエンジニア:モデルを動かす「外枠・道具・権限」を作る
- ループエンジニア:うまくいくまで回す「反復の仕組み」を設計する
一人が全部やることも多い。役割名というより、考える観点の切り方だと思った方が実務では使いやすい。
1. プロンプトエンジニア
ざっくり概要
LLMへの指示文を設計・改善する役。システムプロンプト、ユーザー向けテンプレ、Few-shot例、出力フォーマット指定など、「どう聞くか / どう答えさせるか」を担当する。
昔ながらの「いい感じに聞いてみる」から一歩進めて、再現性のある指示に落とすのがポイント。
具体的な業務例
- システムプロンプトの作成(役割、禁止事項、口調、出力形式)
- 業務別テンプレ整備(レビュー依頼、仕様要約、テスト観点出しなど)
- 良い例 / 悪い例を並べた Few-shot の調整
- JSONやチェックリストなど、後工程で使いやすい出力形式の固定
- プロンプト変更の前後比較(同じ入力で品質が上がったか確認)
- チーム向けの「聞き方ガイド」作成
要するに、言葉でモデルの振る舞いを制御する設計者。
2. コンテキストエンジニア
ざっくり概要
モデルに渡す情報の中身と優先順位を設計する役。「何を見せるか」「何を見せないか」「どの順で見せるか」が主戦場。
プロンプトがうまくいっても、渡しているコードや仕様がズレていれば答えは崩れる。逆に、渡す材料が良ければ短い指示でもかなり安定する。
具体的な業務例
- リポジトリから関連ファイルを拾うルール設計(検索、パス指定、依存関係)
- RAG / 社内ドキュメント検索の対象選定とチャンク分割
- 会話履歴・メモリの残し方(要約、重要事項のみ保持など)
- コンテキスト窓の予算配分(指示 / コード / ログ / ツール結果)
- 余計な情報を削る(ノイズ除去、重複排除、古い仕様の除外)
- 「このタスクではこの情報セット」みたいなパッケージ化
要するに、モデルの机の上に何を置くかを決める人。
3. ハーネスエンジニア
ざっくり概要
モデル本体の外側、いわゆる「馬具(harness)」を作る役。ツール連携、権限、実行環境、ガードレール、観測性など、安全に・実務で使える形でモデルを走らせる仕組みを担当する。
Cursor の MCP、エージェントのシェル実行、社内API接続、承認フローあたりもこの領域。
具体的な業務例
- ツール / MCP / API の接続設計(何ができて何ができないか)
- 実行権限の設計(読取のみ、下書きのみ、本番書込禁止など)
- サンドボックスや作業用ブランチ運用の整備
- シークレット管理、監査ログ、失敗時の止まり方
- 評価用ハーネス(自動でタスクを投げて結果を採点する仕組み)
- 人間の承認ポイント設置(破壊的操作の前に止めるなど)
要するに、モデルを現場の道具にする基盤づくり。
4. ループエンジニア
ざっくり概要
一発勝負で終わらせず、試す → 見る → 直すを回す設計をする役。エージェントの思考ループ、自動リトライ、テストフィードバック、人間レビューの挟み方などが対象。
「一度で正解」より「間違えても収束する」を作るイメージ。
具体的な業務例
- Plan / Act / Observe のようなエージェントループ設計
- 失敗時のリトライ条件(何時まで試すか、何を変えて再実行するか)
- テスト・Lint・型チェック結果を次の入力に戻す流れ
- 自己レビュー / クロスチェックのステップ追加
- 人間レビューを挟むタイミング設計(全部自動にしない)
- 評価セットを使った継続改善(週次で成功率を見るなど)
要するに、品質を一発に頼らず、回して上げる仕組みの設計者。
どう使い分けるとわかりやすいか
たとえば「社内向けに、仕様書とコードを見ながら実装案を出すエージェント」を作る場合:
- プロンプト:役割、出力フォーマット、やってはいけないことを書く
- コンテキスト:仕様書・関連コード・過去決定事項の渡し方を決める
- ハーネス:リポジトリ読取、Issue参照、PR下書き作成の権限を付ける
- ループ:テスト失敗時に修正再実行、最終は人が Approve
こう見ると、単なる「プロンプト職人」だけではエージェント開発が回らない理由がわかりやすい。
現場向けのざっくりまとめ
- プロンプト:指示の質
- コンテキスト:入力材料の質
- ハーネス:実行基盤の質
- ループ:改善プロセスの質
AI活用が「チャットで聞く」段階から「業務に組み込む」段階に入ると、後ろの3つの比重が一気に上がる。まずは自分たちの作業をこの4つに当てはめてみると、何が足りないかが見えやすい。
次回以降は、各ロールごとに実務で使えるチェックリストや、Cursor / MCP 周りでの具体例も書いていく予定。